整形疾患関連
- 健診で先天的股関節脱臼の疑いがあると言われました。
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先天性股関節脱臼は女児(男児の約 5~9 倍)、骨盤位出生に多く、冬季の出生に多いといわれています。右側より左側に多く、家族歴(家族に先天性股関節脱臼や変形性股関節症など股関節の悪い人がいる)がある方に認められやすい傾向にあります。
スクリーニングの方法はいくつかあります。- 股関節開排制限
子供をあおむけに寝かせて骨盤を水平にし、股関節と膝関節を90度に屈曲して開く。股関節を開いたとき、床からの角度が30度以上ある場合を開排制限陽性と判定する。
但し、男児は女児と比較して股関節の開きが固いことが多く、軽度の制限は異常のないこともあります。 - 大腿皮膚溝(太もものしわ)非対称
子供をあおむけに寝かせて、下肢を伸展し大腿皮膚溝の深さ、長さ、位置の非対称をみる。太もものしわが左右で違うことは正常でもよくみられる。深いもの、大腿内側から後面に達する左右差を陽性とする(浅く、短い皮膚溝は非対称としない)。
- 股関節開排制限あり
- 大腿皮膚溝・鼠径皮膚溝の非対称
- 家族歴
- 女児
- 骨盤位分娩
以上のうち、①が陽性、または②③④⑤のうち2つ以上が陽性であれば、整形外科での診察を受ける必要があります。
保存的な治療で80-90%は整復可能であり、10%は手術が必要と言われています。
月齢が進むほど(股関節がしっかりするほど)、治療は難しくなります。歩行が開始されるまで脱臼の整復がされないと、跛行が生じたり、お尻を突き出すような歩行になったりします。 - 股関節開排制限
- 赤ちゃんの顔がいつも同じ方向を向いています。
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色々な原因で、頸部を側屈した状態で拘縮してしまっている状態を斜頸と言います。
乳児期までの斜頸は筋性斜頸、学童期までには環軸椎回旋位固定が多いと言われています。
筋性斜頸は他の人が首を動かそうとしても、可動域に制限がありスムーズに動きません。
一方、他動的に動く場合は眼性斜頸(斜視・眼振伴う)や耳性斜頸(難聴)を疑います。- 筋性斜頸
胸鎖乳突筋(首の前面にある筋肉)の拘縮によって、首が拘縮側(患側)に回旋します。
胸鎖乳突筋に腫瘤をふれます。これは生後3週間前後に一番目立つようになります。1歳までに90%は自然に治癒しますので、1歳までは経過観察を行います。特別な治療法はありませんが、反対側から話しかけたり、枕の工夫をするなど日常生活の調節は有益であると言われています。一方、マッサージや無理に矯正する事は勧められていません。
もし治らなかった時の手術の時期ですが、あまり早いと再発する事が多く、3歳前後が目安となります。 - 眼性斜頸
眼球を動かす筋肉の麻痺があった場合、斜頸位を取る事によって複視を避ける様になります。これを眼性斜頸と呼びます。斜頸位と反対側に首を向けると眼球の上下偏位が明らかになったり、片方の目を覆うと斜頸が消失する時に疑います。目の治療により改善します。 - 環軸椎回旋位固定
頸椎の1番目と2番目がずれています。主に2つのタイプに分かれます。咽頭炎や中耳炎などの首周囲の炎症によってリンパ節炎が起こり、それに筋緊張が生じて斜頸となるものを炎症性斜頸、外傷によって筋自体にダメージが生じて斜頸となるものを外傷性斜頸と言います。発症から1週間以内は、起因する疾患を治療しつつ経過観察となりますが、1週間以上続いたり症状が強い場合は、入院の上牽引や手術治療を行う事になります。
他、原因の特定できない斜頸である痙性斜頸や習慣性斜頸などがあります。
また上下肢の動きに左右差や異常がある場合は脳性麻痺などを疑う必要があります。 - 筋性斜頸
- 子供の足がO脚・X脚ではないでしょうか?
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X脚とは普段から両膝が内側に彎曲した状態で、両膝内側を密着させても左右の足関節内果(内くるぶし)が接しないものを言います。
O脚とは普段から両膝が外側に彎曲した状態で、左右の足関節内果(内くるぶし)を密着させても両膝内側が接しないものを言います。
一般に乳幼児の膝は生理的にO脚であり(2歳時まで)、歩行開始後より徐々に外反していき3歳からX脚傾向となります。その後、6歳から7歳ぐらいで正常な成人の下肢形態を獲得していきます。生理的な変化は左右対称であり、痛みや機能障害などはありません。
遺伝的に変形がある場合はO・X脚は継承されます。
病的なものとしては、先天的・後天的な大腿骨・脛骨の形態異常(くる病など)、靱帯の異常、外傷後変形などがあります。1~3歳で改善するはずのO脚が逆に悪くなったり(Blount病)、片側のみの変形であったりした場合、病的なものを考えます。- くる病
くる病とは、カルシウムやリンの不足による骨の石灰化障害です。ビタミンDの作用不足で発症するタイプと、リンの不足(再吸収障害/尿中排泄過剰)で発症するタイプに分かれます。
ビタミンDは食事摂取・紫外線により皮膚で合成された後、肝臓で活性型に代謝され作用を発揮します。完全母乳栄養の子供や食物アレルギーにより食事制限をしている子供ではビタミンD摂取不足が起こりやすく、また日光照射不足があると皮膚でのビタミンD合成が低下してしまいます(必要照射時間の目安:夏なら30分、冬なら1時間程度)。
ビタミンD欠乏症を来すと腸管からのカルシウムやリンの吸収が減少してしまい、血中のカルシウムとリンが低下します。すると、血中のカルシウム濃度を上げるために副甲状腺ホルモンが分泌されます。このホルモンは、カルシウムを血液中へ送るために骨溶かす働きがあります。またリンが低下すると、骨の形成成分が不足します。そのため骨が軟らかくなってしまいます。
- くる病
- 足が痛い!可能性の高い病気は…?
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- 成長痛
2歳頃の幼児から小学校低学年くらいに多くみられます。頻度は月に数回程度。
成長痛の原因はよく分かっていませんが、周囲の環境変化によるストレスや、日中に蓄積した疲労感などが影響しているのではないかと言われています。
日中は元気に遊びまわっているのに、夕方から就寝するぐらいの時間帯に急に足の痛みを訴えます。数時間以内に消失し、寝て起きれば翌日は何事もなかったかのように元気に走り回ります。
あくまで除外診断(他の病気の否定が必要)になるので、日中も痛みが続いたり他の症状を伴う様であれば検査を行っていく必要があります。 - 単純性股関節炎
2~10歳(特に5歳頃)の子供が急に足を痛がって歩けないという症状が起こります。
自分で動かしても、他人に動かされても同じぐらいに痛みが生じます(筋肉痛であれば筋肉自体に圧痛があり、痛みの程度は、「自分で動かす>他人に動かされる」事が多いです)。
発熱は認めないことが多く、血液検査でも炎症反応の上昇はあまりありません。
股関節の安静によって2週間以内に自然軽快します。痛みと関節の可動域制限がなくなれば運動制限解除です。ただ、股関節の痛みだけではなく全身状態の悪いお子様の場合、化膿性股関節炎の事があります。これはしっかりとした治療が必要となります。 - Sever病(踵骨骨端症)
野球・サッカーなどのスポーツをしている小学生男児に多く認められる、踵の痛みを主な症状とする疾患です。
踵骨の骨突起の骨端炎で、踵骨の骨端核がアキレス腱および足底腱膜によって繰り返し引っ張られる事によって発症します。
成長痛は夕方から夜間に痛むのに対して、こちらは基本的に運動中にのみ痛みがあります。痛みは運動を中止すると治まります。
他、かかとが痛くて下ろせないためつま先であるく、踵あたりが腫れて押すと痛いなどの症状があります。
治療は保存療法となり、スポーツを中止して安静にしていれば自然軽快します。しかし、症状があまりにも強い場合や長期間にわたる場合は整形外科での診療が必要となってきます。
- 成長痛
- 背骨が曲がっているように感じます。
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- 先天性側弯症
自覚症状を呈していない事も多いですが、認められるものとしては姿勢の異常・腰背部痛などがあります。肩・肩甲骨やウエストの左右差が生じる事があります。
6歳前後に手術を行う事が多いですが、奇形のタイプによって予測される症状の進行速度が異なる為、手術の時期は年齢のみで判断できません。 - 特発性側弯症
原因不明の側弯症です(他疾患に合併するものは症候性側弯症)。思春期発症が多く、10歳以上の女児に好発します。先天性側弯症と同じく、多くは無症状です。ご家族が姿勢異常に気付いたり、学校健診で指摘されたりして発見される事が多いです。
肩・肩甲骨・ウエストラインの左右差、前屈時の肋骨隆起をみて診断をします。治療法としては軽度の場合は経過観察、それ以上の場合は年齢や性別も加味し、装具や手術が選択されます。
- 先天性側弯症
- 腰椎分離症の疑いがあると言われました。
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好発年齢は小学校~高校生、基本的には脊椎椎弓に発生する疲労骨折の一部と考えられています。スポーツ時に痛みが増強し安静にて改善する場合、伸展・回旋運動で限局した腰痛が起こる場合はこの疾患を疑う必要があります。治療ですが、初期の場合は骨の癒合を目的とします。すなわち全てのスポーツ活動中止、装具の装着を行います。CTで骨癒合が確認されるまで行われます。進展しきってしまっている場合は疼痛管理を行いつつスポーツ復帰を支援する、手術を行うなどの選択を行います。